脱引きこもりの処方箋を考えてみた記事の続きです。
ふつうに働いたり、結婚して子育てをしたり、という体験がある人からはあたりまえのことじゃないかと思われるかもしれません。しかし、健康な人間が送れるはずの生活ができなくなってしまったのが、引きこもりの状態です。とても情けないのですが、ガタイは大人なのに、精神的に幼稚園児か小学生ぐらいまで戻ってしまっていて、それなのに特定のことに対する万能感(絵を描くとか、妄想小説を書くとか)だけは人一倍高いのです。一般人が自分たちはできるのに、なぜお前はできないんだと責められると、引きこもり当事者はよけいに世間に叛いていくしかありせん。
そして、本人はある日、膨大な時間が流れてしまったことに気づいてしまい絶望するしかなくなります。そのような事態にならないために、すこしずつでもいいので、早いうちから自分の人生を取り戻していく方法があるのです。
・ネットやゲーム漬けをやめる
現実逃避としてSNS依存やゲーム中毒になる人が多く、社会問題化しています。ネットで出会った人とのトラブルに巻き込まれ、精神不安定になってしまうひともいます。ゲームの攻略は時間がかかるが下手な達成感があり、連帯感も生まれやすいので、ハマってしまうようです。また、ネット上の賞賛ばかり得ていると自己スキーマ(自分が思い描く自己イメージ)が現実離れしてゆがんでしまい、自分を客観視できなくなります。あと、ネットだけの付き合いの人を意識しすぎて、言動に振り回されるのはやめましょう。身元が分からない、あなたのことを知らない人がなにを言ってこようが、あなたの実人生にはなんら関係のないことです。悪いニュースだけネットで集めて、自分が世の中に出ない言い訳にする癖はやめにしたほうがいいです。私自身もブログ依存気味で、それに救われたけれど、駄目になった面もあったので、注意を促しておきたいのです。
いきなりやめるとリバウンドしてしまいがちですので、徐々に触れる時間を減らし、他の楽しみで置き換えるようにするといいでしょう。ちなみに私の現在の気晴らしは、庭の草刈りと木の剪定です。自然に触れる生活をすると、心の荒みが剥がれていきます。
・運動をする習慣を生活にいれる
軽いメニューでいいので、からだを動かす習慣をとりいれると、気分がほぐれます。また、スマホの見過ぎでたるんだ筋肉もとれて、表情筋が鍛えられ、顔つきもしっかりしてきます。メンタル不全は睡眠不足や長時間のスマホ、PC画面視聴による肩こりなどにも起因しています。寝たきりになってしまうと、歩けなくなってしまうので、こまめに掃除をするなりして運動をしてください。寝ながらスマホはとくに体力が落ちますし、座りながらネットは腰や背中に負担がかかりやすいです。気合い入れてジョギングなどではなくても、室内でスキマ時間にできるトレーニングはたくさんあります。オススメはやはりラジオ体操ですね。
・日記をつける、手帳をもつ
ネット上に不安不満を書き込んでトラブルになるくらいなら、誰にも見られない日記に書いておいた方がいいです。人間だれしも、耳を塞ぎたくなるような罵詈雑言が腹の底に巣くっているものです。ちらしの裏にでもメモして破棄していきましょう。ネット上に匿名で書き込んでも、悪口愚痴を誰かに褒めてもらう、同情してもらうために書き連ねる悪い癖がつく、いやな記憶が脳に定着して蒸し返すのでやめたほうがいいです。手帳がいいのは時間管理できるところと、タスクを書き込むことで自分の行動をふりかえることができるからです。
・親子、夫婦間で対話する時間を毎日つくる
親子や夫婦間が冷戦状態、会話がないのは、それまでのコミュケーションが命令ベースだからです。なにかを要求する、支持することしか語らず、相手の心情や健康状態はそっちのけ。子どもの頃から、顔を見れば勉強しろと親に言われ続けた子は、表向き良い子ですが裏の顔があるものです。赤ん坊のように、自分のケアは誰かがしてくれるものと考えていないでしょうか。良好な家庭は家事でも協力し合っていますし、人生上の課題について問題意識を共有しあっています。また老親はいつまでも出しゃばらず、たまには子の意見に耳を傾けてみる、子を代表にして対応させてみるのもいいでしょう。子は失敗しながらも自己決断することで自信がつき、成長するのです。鳥ですら我が子を巣立たせるのに、人間ができないはずがありません。
・なんらかの人生の目標をもつ
進学する。資格取得をする。PCスキルをアップさせる。運転免許をとる。本を数冊読む。マラソン大会に出る。どんなささいなことでもいいので、目標をもってそれを達成すると、生活に張り合いがでます。すこしずつでいいので、前に進んだ実績をつくっていくのです。またこうした外に出る活動を通じて人のつながりができ、自分の世界もひろがります。いずれ就職、再就職したいひとは、求人誌をチェックしたり、ハローワークに出かけて相談してみたりするのもいいです。職員と話をする訓練をしてもいいのです。最近では職業訓練や面接指導、履歴書の作成法などもハローワークで充実しています。日雇いや短期のバイトでもいいので、すこしずつ働くのもいいでしょう。自分で働いてお金を得られた喜びは何にも代えがたいものです。
・引きこもりやメンタルケアの専門家を頼る
上記はあくまで本人による自己改善なのですが。あまりに長期にわたる場合は、専門家の支援を仰ぐことも必要です。引きこもりは人と会うのが怖い病気ですが、ひとと会うことでしか解決できません。ただし、引きこもりカウンセラーや、心療内科などの医師は本人との相性もありますし、本人が病気扱いされプライドが傷つくこともあります。あと、霊媒師、占い師などの宗教関係に過度に救いを求めるのは絶対にやめたほうがいいです。お墓参りや寺社詣でをするぐらいにとどめておいたほうがいいです。
最近は、ひきこもり者をむりやり寮生活させて立ち直りさせる名目で高額な請求をする「引き出し屋」の被害も増えています。最悪、親子関係が崩壊して、引きこもりが長引きます。第三者、外部機関を頼るのはいいのですが、引きこもり当事者がなるべく自分から通い出すように見守っていくようにしましょう。
引きこもりに至る人は、他人と比較してしまい、どうしても自分を不幸だ、不能だと考えてしまいがちです。
しかし、一見、多幸感にあふれ才能豊かそうなひとでも、隠れた問題を抱えているかもしれませんし、能力があるせいで要らぬトラブルに見舞われているかもしれません。幸福そうで強そうに見える人は、蔭で見えない努力を山ほどしているし、辛酸をかなり舐めて苦労しているからこそ、他人にいたわりができるのでしょう。
長期間引きこもりをしている、あるいは転職と離職をくりかえしていると、社会復帰する意欲がわきづらなくなります。
よく言われることですが、基本的な生活習慣の正しさ、時間や健康、金銭の自己管理、人間関係の結び方などを見直すことで、生きづらさが改善することはあります。本人の体質や能力にも寄りけりですが、思考の癖を修正することで自分の認知の歪みや、判断力の遅さに気づいたり、攻撃性が薄らいだりすることはあります。
引きこもり者は「社会に自分の居場所がない」と考えています。
ですので、なんらかの軽微な作業をさせるとか、家庭内でもなんらかの役割を与えるとか、居場所づくりによって自信を取り戻させることが大切です。個人事業主の親御さんで家族をただ働きさせているひとが多いのですが、仕事を手伝う奥さんや子どもにはしっかりと給料を払う義務があります。財布を握っていた父親が急逝し、残された妻子が世間知らずで相続の手続きも権利義務の継承もなんら果たさないので、周囲が迷惑をこうむったケースがあります。親が長寿であるのはいいことですが、世代交代がうまくいかず家庭崩壊していることが多いのです。
自分の人生を自分で引き受ける覚悟をする状態に持っていくために、すこしずつでいいので助走をつけてみてください。また周囲の人は、回復に時間がかかるかもしれず、いきなり就職しろとか、結婚しろとか、ハードルの高い目標をおしつけず、見守っていく余裕が必要でしょう。子どもの気持ちに寄り添う姿勢が大事ですが、それは子どもの趣味に無造作に付き合うというだけではありません。ただし、寄生されている親御さんは自己の資産状況や健康面について、引きこもりの子ときちんと話し合い、いつまでも援助はできないことを知らせておくことが大事です。
引きこもりになった当人もいい年をして親を攻撃する人が多いのですが、子どもを育てるのに親はなみなみならぬ労力をかけていることを考えてほしいです。
夜泣きをしたり、おむつを替えたり、送り迎えをしたり、自分の欲しいものをがまんして子どもに与えたり。食費もかなりかかりますよね。だからこそ、自立できない子どもに親は多少の文句を言うのです。自分がけっして、世の中にかってに独りでに育ってこられた存在ではないという自覚が生まれたときに、ひとははじめて、自分が生きることに感謝をおぼえ、反省する気持ちが芽生えてきます。この感謝や反省の態度を、子どもは親や教師など周囲の大人を見て学ぶし、長じてもそれが残っているものですので、くれぐれも周囲の大人が見本をしめすということを忘れないでほしいですね。最近、民法の子どもに対する懲戒権見直しが論議されていましたし、勉強を押し付ける教育虐待もゆきすぎたしつけも、考えものですね。
家のリフォームだとか家族の看護介護だとか、出産育児だとか、家庭内の課題を親子家族で話し合って共同で解決できるような試練を経ていくと、他人を信頼する余地がうまれ、世の中との折り合いのつけかたもみずから学んでいくのではないでしょうか。とくに同居している場合は、お金の使い道についてきちんと話し合わないといけないですね。子や孫を騙ったオレオレ詐欺がおきるのも、そもそも親が子の不始末を片付けてやろうとする甘さからくるもので、互いに親離れ子離れできていないのです。いじめ問題についても同様。
これは引きこもりだけに限りませんが。
問題の当事者だけが悪い、俺たちは正常だから無関係となれば、引きこもりが周囲から閉ざされ、逆に遠ざかってしまいます。
親子のあいだ、教師と生徒のあいだではなく、社会すべてで関心を抱かないといけないのです。引きこもり者を社会復帰させるための働きやすい労働環境づくりやメンタルヘルス不調への理解も今後の社会で欠かせない課題です。今年の七夕に私が願いたい望みの一つであります。
★不登校・引きこもりでも生存戦略しませんか★
学校に行きたくない、働きたくない、世の中に出たくないと思っている人に。人生は失敗したことではなく、その挫折からなにかを学んで、いかに立ち上がったかで決まります。 やや、お節介な記事の一覧です。私はこの記事を誰かに上から目線でお説教するためではなく、自身の未来のために書いています。