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Channel: 陽出る処の書紀
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五月は薔薇の園に

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近郊の自治体にあるという、薔薇園を訪れたのはつい先日のことで。
次の日が台風なので花びらが飛び散るまえに見納めしておこうという、この目論見は奏功して、なんとも見頃を迎えた花ざかり、薔薇づくし。

薔薇属を語りながらも、実にさまざまな品種があるものです。
色は大ざっぱに赤、白、黄の三種に分けられるのだけども、マーブル模様があったり、縁取りがあったり(食い意地の成せる業か、どうも薄きりハムに見えてしまう…)、グラデーションっぽくなっていたり。品種改良の成果だとしても、どうやって、こんな絶妙な色あいになったのか。いや、ふしぎですね。

形もまたさまざまで、薔薇と言ったら、紙ナプキンよろしく花びらの端が三角に折られたのが重なっている基本形もあれば、菊の花のようにめしべを暴いてみせているものや、芙蓉のようにふわふわした感じのものや、小手毬のようにこんぢんまりしたものまであります。花びらもびろうどのように厚いものや、レース地のように透けるほど薄いものまで。花も変れば、葉蔓も変るもので、棘があったり、なかったり。

おもしろいのが、薔薇に限ったことではないのですが、品種ごとに名前があります。名前を聞けば誰でも知っているであろう某国の女王陛下であるとか、我が国の皇太子妃や内親王殿下であるとか、高名な大女優であるとか。なぜか暗殺されたあのアメリカ大統領や、美術史上の巨匠の名前まで。そして、なぜか、その名を知ったあとで見返してみると、じつにその名を体現した咲きぶりだと感心してしまったり。

この薔薇園は数年前に訪れたもので、そのとき、デジカメで撮影したはずなのですが、あまりに数多く枚数を重ねたので、整理が面倒になって放置、そして廃棄となったのでした。デジカメはケーブルを紛失して以来、ブログに撮影画像を掲載できなくなったので興味を失って、今回も撮影することなく。

薔薇園の公開は毎年あったのですが、足が遠のいていたのはワケがあって。
二、三年前に野生の茨(茨は正確には棘のある木のことで、薔薇属ではないけれど)が庭木や草地に絡まっていて、もはや株という状態で、おぞましいぐらいに密生していたのを、さんざん痛い思いをして人力で駆除したから。現在でもまだ根が残っているので、柔らかいうちに株を掘り起こして、除草剤を撒いて様子見してみるのだけれど、油断ならない。

そんなわけで、私にとっての薔薇は、物語にあるような気高い、純愛の象徴なのではなくして、ひたすら過去の血と汗と傷にまみれた苦闘のイコノロジー。刈った野茨の蔓をいまだに乾かして放置していますが、かなり丈夫で土に還ろうとせず。薔薇は分厚い手袋を二重履きするぐらいで扱わないと、大変なんですよね。

薔薇そのものの優雅さよりも、それを維持管理している方々のご苦労が偲ばれる、花見となりました。栽培品種はさほど棘は鋭くないものが多いものの、やはり危険な花であることには変わりありません。くわばら、くわばら。食えない薔薇です。

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