ごきげんよう、お姉さま。本日は、お楽しみレビューの日です。
さて、ここでクイズです!
平成百合ブームの先駆け作となった集英社コバルト文庫の「マリア様がみてる」全39巻。そのなかで、原作者・今野緒雪先生以外が著者として表紙にクレジットされている巻があります。それはなあに?
正解は「プレミアムブック」と「イラストコレクション」の二巻(…だけですよね、たぶん)。
今回紹介する「プレミアムブック」は、いわゆるアニメ第一期の解説ムック本。著書名義は、今野緒雪、ひびきひびき玲音with山百合会。山百合会というのは、アニメ版の製作委員会のことですよね。著作権をもつ出版社、アニメ制作会社の元請、下請、配給会社とか音楽関係とか、スポンサーも含めての。
文庫本サイズとはいえ、カラーページが多いので、2004年8月当時のお値段で552円+税だと600円近く。本編は150頁ぐらいまでなので、ふだんの小説に比べたら薄く、当時は税抜400円台だったので割高だったのでしょうね。けれど、アニメの解説本てたいがい大判サイズで当時でも2000円近くだった覚えがありますから、このお手軽サイズでお小遣いでも買える価格帯、すごく嬉しいですね。それだけ、このシリーズ、集英社では利益があったんでしょう。いわゆるファンサービス的な特別巻です。だから、名前もプレミアムブック。
中身は、アニメファーストシーズンの全十三話のダイジェスト。キャラクター設定画。
さらに声優さんたちが選んだ名場面とコメント。さらに学年ごとにわかれての声優さんインタビュー集。とくに薔薇の館やら学園内の設定資料は、二次創作する人にとってはかなりの参考になりますね。嬉しいです。原作だとそこまで背景がありませんから。
声優さんのインタビューは、もうご本人がキャラになりきってしまって。
祐巳とか祥子さまとか、白薔薇さまとか、呼び合う仲だそうで。当時それぞれ人気声優だった方がたばかりなので、他の出演作と被って混乱しないのかしらと思ってみたり。いつも思いますが、植田佳奈さんと能登麻美子さんが並んでいると、神無月の巫女を思い出してほほ笑んでしまいます。Fateシリーズもそうですけど、キャスティング絶対意識されていたんでしょうね。
恥ずかしながら、二年生組の中の人はどちらも伊藤さんなので。
いまだに、どちらがどちらなのかど忘れしてしまいます。伊藤美紀さんて、ドラゴンボールの人造人間18号のひとじゃなかったのかしら? 池澤春奈さんは誰もが知るあの作家さんの御令嬢ですし。かなり豪華なキャスティングですよね。
挿絵担当ひびき玲音さんのコミックは、アフレコ見学のエッセイ漫画および、第一話の学園祭お芝居劇の一幕。祐巳と祥子さまがシンデレラ劇で衣裳交換する場面。胸囲の格差とか百合界隈でネタにされるのって、ここからきてるの、もしや? そういえば、神無月の巫女でもありましたっけね。胸がぶかぶかで腰がぎゅうぎゅうっての(笑)。なんで、そこを選んだのか。もっと他があるじゃないの! ほら連弾シーンとか、温室での祥子さま励まし祐巳とか、紅カードの発見とか、デート回とか。いや、まあ、この漫画でもじゅうぶん楽しめたのですけどね。男性ファン向けのネタだったのかしら。
さて。最後のお楽しみは巻末収録の、緒雪先生描き下ろし小説「Answer」
なんと声優さんのリクエストにお応えしたという、本邦初の水野蓉子さま×小笠原祥子さまの出逢いの話。もちろん祐巳みたいに、出会い頭に衝突事故なんてことはありませんことよ。祥子さまを怪獣と表現した蓉子さまのセンスにびっくり。でも、周囲を破壊しておののかせながら、実は何かに傷ついている脆い存在だと見抜いたところに、お世話好きな蓉子さまの優しさがあります。
蓉子さまの上の世代の薔薇さまも、なかなかに癖があったようで。江利子さまはふらつているし、聖さまはサボり魔だし、真面目っ子の蓉子さまは面倒見がいいだけに苦労したでしょうね。でも、この頃から聖とはなんとなく気の置けない親友同士ってのもまたいいわけで。風呂敷みたいに使い勝手がいいといわれる蓉子さまの評価も、なんだかな。扱いづらそうな人でも誰でも包み込める懐の深さがある、という意味ならばいいけれども。
このエピソード、惜しむらくはじゃっかん書き急がれた感じがして。
なにせあの祥子さまの姉妹締結の話なのだから、もうすこし話を膨らませたら一冊分ぐらいにはなりそうなんですね。蓉子さまというキャラは魅力的なわけだし。祥子が習い事をやめて山百合会入りを決意するまでに、二、三の悶着があってもよかった気もしますが。まあそれは白薔薇のあのごたごた(白き花びら)を読んでいたせいなのでしょうかね。そういえば、黄薔薇の江利子さまと令ちゃんのスール締結もスピード婚だった覚えが。
ただ、祥子さまの「今のままの自分がいいとは思っていないだけです。私の十五年間を否定はしません。でも、私は何かを探しているだと思うのです」と凛然と言い切った台詞、なかなかかっこいいじゃないですか。
傍からみたら完璧に見えるのに、何か欠けていると自己分析する。だからこそ、お稽古事でに必死で自己研鑽に励む。がんばりすぎる女性にありがちな、空虚感ではないでしょうか。じつは蓉子さまが強引にひきずりこんだのではなくて、祥子のほうから飛び込んできたわけですが、実際のロザリオ授受の結末はごまかされているんですよね。その場面、本編であったのだろうか? 再読がまだ終わってないのでうろ覚えです。
ところで、皆さんはアニメのマリみてってお好きでしたか?
私は本格的に観た記憶があるのは、瞳子が祐巳の妹になるあの第四期ぐらいで。この第一期単発で観た覚えがあったような、なかったような。祥子さまとかの大人びたキャラの顔がちょっと原作の挿絵より濃すぎて、当時はあまり好きではありませんでした。あと、祥子さまのお声、失礼ながら十代っぽくないといいいますか。祐巳の心の声で解説されるんですが、そうした口頭の説明ではうるさいので、アニメなら動きと匂わせな演出で示してほしかったなと。あと、次回予告の掛け合い、ここにも収録されていますが、おもしろすぎます(笑)。いまから観たら違った印象になるかもしれませんが、個人的に、マリみてシリーズはひびきさんの絵でなじんでいるので、漫画版もアニメ版も買いませんでしたね。
ただアニメ版に興味がない方でも、蓉子×祥子の短編はおススメ。
この小話のためだけに買っても惜しくはない一冊です!
それにしても、この巻、表紙買いをしてしまうほど、うっとりな薔薇姉妹。
第一巻のダンスシーンですよね。デジタル作画だから、カラーリングが映えているのでしょうね。マリみてシリーズのなかでも格別お気に入りの表紙なのです。祥子さまの髪、アニメだとどうしても長く重くなるのですが、挿絵だと制服の黒味と喧嘩せず、躍動感を見せるために軽めに描いてあるんですよね。
(2023/04/09)
【レヴュー】小説『マリア様がみてる』の感想一覧
コバルト文庫小説『マリア様がみてる』に関するレヴューです。原作の刊行順に並べています。
(2009/09/27)
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