昨年末におこなわれた中高年引きこもり調査によって、はじめて40代から64歳までの中高年者の引きこもりの存在があきらかになりました。
引きこもりは従来、39歳までの若年層特有の青春のつまずきと捉えられがちでした。しかし、なかには思春期から長期化したり、もともとは社会で活躍していたのになにかのきっかけで対人関係を閉じてしまったり。まったく部屋から自宅から出ないわけではなく、自分の享楽のためになら積極的に行動できるなど、引きこもり像も変化しています。以前は生まじめな責任感の強い人がうつ病に罹患していたのですが、いまでは責任逃れで刹那的な生き方を好むひとの新型うつ病が多いというように、社会的病理の傾向も変化しているのでしょう。
2019年7月3日の読売新聞朝刊の読者の投書欄に、「友人の励ましで引きこもり克服」という文面が掲載されていました。
この男性は現在70代。40代の頃、勤務先が親会社に映ったがなじめずに離職。再就職がうまくいかず、自暴自棄になって半年以上うつ状態に。同級生の友人が励ましてくれて、気分が明るくなり、職探しをはじめ引きこもりから脱したとのこと。この友人はすでに亡くなってしまったが、いまだに恩義を感じていると結ばれています。
この男性は、友人の励ましもさることながら、このままではいけないと自分の人生を見つめなおしたのでしょう。落ちるところまでは落ちたが、ある時点でたちどまったのです。本人が素直で努力家であったから、友人も救いの言葉をさしのべてくれたのではないでしょうか。
30年も前といえば、当時バブル時代で経済は絶頂期。いまのアベノミクスもそうですが、誰もが経済成長の恩恵をうけられたわけではありませんでした。
私の実父も存命であればこの男性とほぼ同年齢なのですが、この実父も脱サラして商売を軌道に載せるまで苦労の連続だったと聞いています。東京の親族経営の会社の営業をしていましたが、ブラック労働もいいところで続けていれば過労死すると言われて、退職しました。起業するのはコミュニケーション能力の高い父の性分に合っていたようですが、いまの大資本市場で個人の小売りが壊滅の時代ならば、父がうまくやっていけたか定かではありません。私の両親は祖父母からの資産分けも資金援助もなく、商売仲間のつくった負債をかかえながら、子ども3人を不自由なく育ててくれたので、けっして豊かで見栄えのいい暮らしではなかったのだけど、子どもに横暴な父母ではなく、私はとても感謝しています。不渡りを起こしたこともないですし、お金で他人に迷惑をかけたことも実家に泣きついたこともないです。父が偉いというよりも、それを支えた母親の力も大きいと思いますが。私は実親の商売を継いだわけではないので、父のもっていたノウハウを継承することができずじまいでしたが、もしいまも生きていたら学ぶことは多かったはずです。就職氷河期世代は不幸だ、生まれた時代が悪かったと嘆く前に、もっと上の世代の生き方から吸収することも、それらを捨ててなおしていくことも、たくさんあったはずなのです。そもそも、いまの中年世代がそのうち老害呼ばわりされますし、お荷物にならないようにしたいものです。
引きこもりが長期化すると、なかなか一人では抜け出せなくなります。
家族も恥ずかしいので、外部機関に相談できないですし。また、大学病院の精神科などに通院させたり、宗教に依存したりして、お金をむしりとられるだけで、むしろ親子関係が崩壊し、かえってよけいに引きこもり当事者が粗暴になったり、ネット上のつきあいに溺れて人間不信をこじらせたりしてしまうものです。社会人経験のすくない粗暴な大人に毒されて、若者がやる気をうしなったり、未来に絶望したりする負の悪循環が起きはじめています。
今回の投書のように、失敗経験のある大人がみずからの復活体験を語り、共有していくことはとても大事なのではないでしょうか。
昨今はやたらと成功者ばかりが賞賛され、成果を誇るエリートの自己啓発的な文面があふれていますが、誰もが強くは生きられないものです。他人のしくじりをすぐ叩いたり、さらし者にしたりするネット上の慣習のせいで、自分の負けや弱みを気軽に口にできなくなっています。私自身もブログで憂さ晴らしのような苦々しい記事を何度も書いたことがあるので、自分のゆがみがよくわかります。
他人が笑っていたり、幸せだったりするのが憎たらしかった、と述懐できたこの男性は、自身のこころの闇を克服でき、友人のアドバイスをうけいれることができたのでしょう。そのような理解ある友人や教師が側にいなくても、魂の震える映画や小説、本に書かれた言葉、アスリートの勇気ある行動などがあなたの人生について諭してくれることもあるのです。
誰でも世の中から断絶したいと思うときがあるが、周囲の励ましさえあればよみがえることができる。落ち込んで世の明るさから逃げたくなった自分を赦してもいいが、いつかはきっとそこから脱け出せると信じることです。自分を信じていれば、助けになってくれる人が現れるものです。
★不登校・引きこもりでも生存戦略しませんか★
学校に行きたくない、働きたくない、世の中に出たくないと思っている人に。人生は失敗したことではなく、その挫折からなにかを学んで、いかに立ち上がったかで決まります。 やや、お節介な記事の一覧です。私はこの記事を誰かに上から目線でお説教するためではなく、自身の未来のために書いています。