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自分の引きこもり度をチェックしてみよう

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ここ近年、春先から初夏にかけて不穏当な事件が多いですね。
「7040問題」やら「8050問題」と呼ばれる、大人になっても自立できないままの中高年の存在については最近クローズアップされはじめましたが、じつは以前からこの問題は潜在化していました。

私がお付き合いのある個人事業主さんからも、後継ぎとなるはずのご子息が無気力で働かないという話を聞きます。創業100年近くの歴史ある地域の優良企業であるのに、ご長男が漫画家になりたいから勉強しないので困っている、と社長さんに相談されたこともあります。江戸時代からも富裕な商人の道楽息子などはいたものですが、親の思うままに子は育たない。たとえば青物問屋の長男であった伊藤若冲は、弟に家督を譲って絵師へと転業したのでしたが、近年の研究によれば、実家の経営難にあたり商人の寄合に掛け合ったりして交渉力を発揮した記録が残っています。けっして、絵筆を動かす以外なにもできないぼんくらではなかったのです。

女性にしても、親元にいて家事手伝いでも許される、結婚さえすれば身分保障されるというのは、もはやひと昔前の話。現在はきちんと就職し、社会常識がないと一人前とはみなされないですね。そもそも結婚相手がモラハラDVである、パートナーの失職や疾病リスク、離死別もありますので、経済力をつけておくに越したことはありません。もちろん、育児や介護で働けないのはいたしかたないのですが、誰それさんの「妻」「娘」「母」という付属品扱いでしか女性の自我が確立できない日本の状況は、先進国としてふさわしいものではありません。

既婚者で子持ちであっても、生活経済面で自立せず老親任せ、配偶者に依存していて近所づきあいがないような人も、引きこもりに近いといえます。要するに人間関係が狭い家族内で完結してしまって、社会から孤立の状態。親や配偶者が死ねば、核家族化では頼れる人がおらず、自立できないままになってしまいます。働かないで海外を放浪し、いわゆる自分探しの旅ばかりしている「外こもり」も引きこもりの一種とみなされるとも。

現在は、若者層を中心に働くことに対する疑いが生じやすくなっています。
学校や会社、地域での人間関係につまずき、こころを閉ざしてしまうひとも多くいます。また、川崎市のスクールバス襲撃事件のように、自身が引きこもりであるという認識がない人までいます。社会から接点がなくなってしまう、孤立してしまうというのは、誰にでも生じうる事態です。

この記事ではどんな状態に至れば、引きこもりである危険性が高まるのかを箇条書きにしてみます。あくまで、関連書籍を参考にした私見ですが。

【経済面について】
・同居別居に関わらず、親(あるいは配偶者など親族)に生活費を依存している
・社会保険、税金などで親の扶養に入っていて、自己負担していない
・定職に就いていない、あるいは有職であるが趣味にしかお金を使わない
・将来設計についてまったく考えていない
・家計簿をつけておらず、自分の年間収支、家の資産状況について把握していない
・ギャンブルや課金ゲーム中毒、アイドル追っかけやヲタク破産から抜け出せない
・金銭感覚が狂っていて趣味に濫費し、大人買いがカッコいいと信じている
・いざとなったら国が生活保護で面倒をみてくれるべきだと思う
・趣味の活動(同人誌販売やコンサート、イベントなどへの参加)は積極的だが、安定した職探しをしようとしない

【健康面について】
・他人を容易に信用していない、あるいはまったく疑わない
・感情が麻痺していて、他者に共感できず、話が聞けない。自分の考えを表現できない
・不眠仮眠などの睡眠障害に悩まされている
・食欲不振、食事回数が日に二回、一回になり不規則になる
・腹痛、下痢、多汗、肩こりなどの身体のこわばり、嘔吐などの身体の不全
・時間の感覚が狂っていて、昼と夜、曜日、月の区別がつかない
・運動習慣がなく、アルコール多飲、喫煙癖などの健康障害がある。スナック菓子や炭酸飲料が大好き。
・心身の不調について自覚があるのに、改善しようとしない
・希死念慮(自殺したいと願う)があり、うつ病に罹患したことがある
・気に入らない相手は死ねばいいと願っている

【生活面について】
・進学・受験、就職、結婚、出産育児、病気、介護、死亡などの生活の変化を経験したことがなく、必要な手続きをまったく知らない
・一人暮らし歴がないので、家事がまったくできない
・家事さえしていれば、働かなくても一人前だと思い込んでいる
・部屋を片付けられない、無駄なものが増えていく

【人間スキルについて】
・同世代の友人知人がいない、話ができない、話が聞けない
・自分よりも弱い存在(年下すぎる男女、子ども、高齢者、障碍者)に執着を抱く、もしくは虐待する
・現実の人間との付き合いに興味がない、恋愛したくない。二次元キャラや声優、アイドルなどに懸想する
・異性に対する嫌悪感がある(異性の親きょうだいが嫌い)
・長年、親きょうだいに激しい憎悪を抱き続けた。家庭内暴力があった。
・他人と自分との感情や考えを区別できない、自分を否定する人はすべて敵だと思う
・他人の欠点を粗探しして見下さないと、自我が保てない
・外見的な若さに異常にこだわり、内面がかなり幼い。服装が子どもっぽい。

【家族関係や人生観について】
・過去の優秀だった学歴や仕事にこだわりがあり、環境の変化に耐えられない
・身の回りの生活面はすべて親任せ、親や配偶者はなんでもしてくれる奴隷である
・親子密着で親が子を支配し、人生のレールを敷こうとしていた
・自分の人生の失敗は、親、教師、地域などとにかく周囲が悪いと考えている
・人生はガチャと同じ、いい運に恵まれないなら努力しても無駄だと思う
・自分が成功しないのは生まれた運が悪かっただけと思う
・ネット上での評価数が自分の価値のすべてだと信じている
・家族、もしくはSNSでつながる人の中に、不幸感満載でメンタル不全の人がいる
・困ったら、ネット上の仲良しさんが救いにきてくれると信じ込む
・食べたり、身ぎれいにしたりという必要最低限のことが億劫で無駄に思えてしかたがない


集中力が低下し、勉強、仕事など重要な活動ができないことは、ふだん健康なひとでもあることです。
急に怒りやすくなったり、苛立ったり、感情が不安定になって、誰とも口を利きたくない時期はありますが、それが長期化して慣れてしまうのはかなり危険です。厚生労働省はひきこもりを、「家族以外と接触しない生活を半年以上続けた場合」としているのですが、目安期間がどうこうではなく、自分が上の徴候や症状にいくつかあてはまっているならば、予備軍
たりうる可能性があると考えたほうがいいでしょう。

ちなみに、私は不登校も経験済みですが、大学院時代のある期間、家庭教師などのアルバイトを除けば、研究室と自宅との往復しかしたことがなくて、規則正しい生活が崩れてしまい、実質引きこもり状態だったこともあります。家族が亡くなったとき、しばらく大学に通わなかったこともありました。個人的な人生上のトラウマもあるでしょうが、そもそも修士や博士号取得者でマニアックな知識はあるけれど、対人折衝能力が低すぎて就職できない人はたくさんいます。けっきょく働くのが怖いし、「自分より頭が悪くて、劣っている」人といるのはみっともないと考えていて、象牙の塔に逃げ込んでいるだけなのです。文理問わず、院卒者には進路不明者がいて、なかには自死を選んだ人もいます。ポスドクで期限付き研究員になれても、失職後に一般社会に戻れるメンタルがなさ過ぎて病んでしまうひとが多いのは、負けを認められない自分の思考法に問題があります。これは好きな仕事しかしたくないと叫びがちなクリエイター志望者などにも言えることです。

私自身、親に仕送りは頼らなかったので経済的には自立できていましたが、社会人として精神的に自立できていたのかは疑問でした。本やネットなどの知識を操るのが得意で、楽しいことを集めるのが好きな人は、人生が上手く回っているうちはいいのですが、いざ何かを失うと脆くて世の中から遠ざかってしまいがちです。好きなもののなかに逃げ込んで溺れてしまうのです。

引きこもりは本人の気質にもよりますが、なんらかの精神的トラウマが引き金となって発症していることが多いものです。
いじめや親や教師からのモラハラ、職場のパワハラ、家庭内不和、介護や病気などによる家族の死、など、人生上の難題をのりこえられず社会から逃げている状態です。根本的な解決策がないまま、本人も家族もどうしていいかわからず放置している。親が亡くなってはじめて自立する子もいますが、むしろ共倒れになっていくか、悲惨な事件に至るケースもあります。いずれにせよ、個人だけの問題、ご家庭ごとのトラブルではなく、いまや日本の社会の担い手を失う重大な社会問題です。

引きこもりを人生の落伍者と見るのは簡単ですが、理解者がいれば早期に立ち直ったケースもあります。引きこもりから大学教授になった人もいますし、社会復帰して支援側になっている人もいます。いま考えたいのは、引きこもりを非難することだけではなく、その解決策なのです。メンタル不調が重症化すれば、誰でも引きこもり状態に陥ってしまいます。

次回は引きこもりからの脱出方法について考えてみます。


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学校に行きたくない、働きたくない、世の中に出たくないと思っている人に。人生は失敗したことではなく、その挫折からなにかを学んで、いかに立ち上がったかで決まります。 やや、お節介な記事の一覧です。私はこの記事を誰かに上から目線でお説教するためではなく、自身の未来のために書いています。



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