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ギャンブル落ちするアニメ、是非は問えるのか

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最初に謝っておきます。
今回、あるアニメふくめたコンテンツ業界に対する、やや不快な内容を書きます。これまでも無自覚に批判記事は載せていたんですけどね。

この10月に、ある有名な魔法少女アニメの劇場版が公開されました。
そうです。昨年、前編が公開されてヒットして。2004年のTVアニメ第一作放映以来、長い人気を保ちつづけているあの「魔法少女リリカルなのは」の最新作。劇場版の評判はいいようです。前後編に分かれたと判明してから昨年は様子見でしたが、今年はどうしようかと迷います。われながら、あんなに熱をあげていたのに冷たいなと思わないでもありませんが。

新しい別の作品に乗り換えたからではなくて、あきらかな理由で足が遠のく。
私としてアウトだったのが、この作品がパチスロ機になってしまったことですね。すごくいやらしい言い方ですけれど、パチンコマネーでつくられた映画かと思うと、どうしても気乗りしない。ギャンブルで家庭不和とか、借金とか、駐車場の車内で幼児が熱中症死とか、やはり悪イメージがついて回るのに、そこに夢のある話のアニメが利用されるのは、と思うわけです。幼児虐待から救われる子どものアニメなのに、友情でひとが成長していくアニメなのに、子どもを殺しかねない親が遊び、友人や家族関係が壊れるその遊興に関わっているなんて…と、短絡的に考えてしまいます。

しかしながら。
気になって調べてみたら、ギャンブル落ちしたアニメ、かなりの数にのぼるそうで。「ベルサイユのばら」や「北斗の拳」など往年の名作誉れ高い作もあります。最近の知られたアニメも多いですね。

アニメがギャンブル落ちするのは、アニメ業界とギャンブル業界双方にとってのメリットがあるからだそう。パチンコ・パチスロ機のメーカーからすれば、自作開発のキャラデザよりは、すでにある程度の人気がついて、ストーリー性のある版権作を買い上げたほうが安上がりになる。いっぽう、アニメの制作メーカーからすれば、制作費用と広告費用が回収できるわけですし、続編のアニメ放映作や劇場版製作への資金準備ができる。

よく、アニメのDVDや原作漫画、関連グッズを購入すれば、続編がつくられる。
そんな期待をわれわれは抱きがちですが、なかなかうまく行く話ではないようです。なにせ、深夜アニメ30分一本つくるのでも、1000万円超はかかるという。ワンクール12話としても1億円以上はかかりますよね。下記のリンク先によれば、深夜アニメワンクールで3億円かかるとの試算が…。

しかも、いまはファンがうるさくて特殊効果つかったり、作画に気を遣ったり。しかも、人件費が高騰しているうえ、海外に下請け発注しても円安で高くつく。さらには、少し前までアニメの無料放映動画などの存在でDVD購入層が減ったりもしました。製作すればするほど、負債を抱えるアニメスタジオもあり、倒産も珍しくなくなっています。

パチスロ機メーカーならば、版権を買い上げるだけなので、たとえばテレビ業界のように放映にあたって口を出すこともないでしょうし、パトロンとしてはかなりありがたい存在なのかもしれませんね。

でも、やはり。偏見なのはわかっていますが、自分の好きな作品が賭け事の道具にされるのは、いささかショックです。自分の好きな作品の関係者が、その新作でギャンブル落ちした作品を手掛けていたりすると、申し訳ないのだけれど、その作品に関しては応援できないなと思ってしまいます。その作品の魅力自体がそのことによって削がれるわけではないはずなのですが。しかも、私の好きなその魔法少女アニメのパチスロ機、ネット上ではかなり評判が悪い。ということは、パチスロに利用したことじたい、そもそも失敗だったのか。というか、かなりダークでショッキングな映像のあるアニメ作品でないと、ギャンブルファンには受けないような気がするので、そもそも身売りしたのがマズかったのでは…。「ドラゴンボール」は鳥山明先生が断固反対しているからギャンブル落ちしないらしいですが。

私も昔、勤め先の商品のディスプレイ参照で、アミューズメント業界へのマーケティング調査に出かけて撮影したりしていたのですが。自社の商品に愛着があっても、この場所にだけはどうしても飾りたくないなという気持ちだけは拭えませんでした。自分の本業でも、その界隈からのお話が来ないこともないのですが、やはりお断りしています。その業界で働いている方には申し訳ないですが、やはり受付けられないものがあります。お金が儲かるからといって、手を組む相手をまちがえてはいけないような。青くさい理屈でしょうか。

日本ではIR法が成立し、パチンコに代わるエンタメ産業として、地方振興の美名のもとにカジノ施設が勧められようとしています。このカジノの先進国であるシンガポールや、米国のラスベガスなどでも、実際は雇用を多少は生んだが人口が減少してゴーストタウン化した地域もあり、しかも、ギャンブル依存症患者がかなり増えていることが報告されています。地方のイベント活性化で利用されるアニメやアイドル、パチンコの暴利に頼るアニメの制作費。現在の状況が、カジノの隆盛で引っ繰り返されたら、アニメ業界にはなにが残るのでしょうね。この杞憂は私のかってな思い込みであって、業界の方はきっと違った肌合いを感じていることとは思いますが。

しかし、アニメ制作のお金まわりの現実を知ってしまったりすると。
うかつにあの原作、もしくは続編を、アニメ化してほしいなんて言えなくなりますよね。ギャンブル業界から目をつけられるぐらいに、知名度あがってほしくないとも考えてしまう。

私の子ども時代と違って、アニメがかなり濫造されている現在。
原作漫画の知名度だけを借りて、映像化されたら陳腐に思えるのは、やはり製作委員会に名をつらねて利権を得たい団体が乱立するからなのでしょうか。声優も含めて、次々と新規参入する人材を抱えて食わす巨大産業になってしまったために、仕事を増やさなくてはいけない、もはや自転車操業になっているのでは。映像化されただけで権利金が入ってくるなら、そりゃ、内容問わずに、なんでもかんでも原作付きでアニメ化してればいいということなのでしょうか。制作者がわも、それで楽しいかなと思ってしまいます。素人考えですが。


【参照記事】
深夜アニメの製作資金は約3億円…儲ける仕組みや製作委員会の構造とは 今こそ知っておきたいアニメビジネスの特徴を取材

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