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Channel: 陽出る処の書紀
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お給料はなぜ上がらないのか問題

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給与計算業務担当者の私は、会社の従業員の皆様の秘密を握っている立場です。
そのため、社員皆さんとあまり親しくなりすぎてはいけない、私情が入って給与計算を優遇してはいけない、という心がけがあります。

勤務一年目を迎えたこの頃、社員の皆さんから様々なお声をいただきます。
やはり多いのは待遇に関するもので。「給与が低い」「サビ残が多い」「有給消化がしづらい」など。

これは私自身もそうなのですけども、総務責任者という立場上、いっしょに愚痴るわけにはまいりません。
なんとか、明るく前向きに仕事をしていただけるよう、やんわりとなだめて、押し返す、そんな問答ばかりです。

しかし、本音を言わせていただきますと。
給与が低いには低いなりの訳もあります。まず、本人は同期入社や仲の良くない社員さんと比較して嘆いているのですが、そもそも専門性や技術が必要な職種なのか? 管理責任があり裁量権が大きい業務か? それによって、社内の人事制度は異なるでしょう。

またサビ残もそうなのですが。
本人は長い時間働いて貢献しているつもりでも、会社からしたら迷惑なことも。無駄な残業代や光熱費も発生します。現在の企業は、短時間で高いパフォーマンスをあげる社員を評価します。

また給与は業界の水準や職種によっても異なります。
医師や弁護士などの高度な専門職は総じて高収入と言われていますが、それだけなるのが難しいですし。同じ業界でも会社の経営状態にもよりますよね。

個々人の業務能力を、会社というか経営者層がどう判断しているのか。
それははたしてわかりかねます。多少なりのえこひいきもあるでしょうし、学歴や、前職の給与を加味した場合もあるでしょう。

けれども、目先のお金のことばかりで、自分の仕事の評価を考えてみてもキリがありません。
正社員よりも時給単価にすれば高いように見える派遣社員は、契約終了されやすくなります。40代以降にずっと派遣を続けていれば、紹介が来なくなり、転職ばかりすることになります。それならば、安定して月給が入る正社員を続けた方が楽でもあります。

「仕事の報酬はよりいい仕事」という言葉がありますよね。
社畜を支配するためのブラック企業の常套句、なあんて言われていますけども。でも、私はこれは的を射ている言葉だと思うのです。

転職を繰り返したあげく気づいたことは。
月給がいくら高くても、職種が合わなかったり、人間関係が最悪だったり、職場が遠すぎたりすれば、からだを壊して長く働けなくなるということです。私の職場は給与水準が高いとは言えませんが、意地悪な人はいませんし、パワハラめいたこともありません。そして、給与が高い方はやはり勤務年数が長く、かつ、それなりの任された業務量が多い方ばかりです。

残業代がつかないのに、朝、玄関回りを率先して掃除してくださる方もいます。私も時間があればそうしています。社長に媚びたいから、ではなく。職場の労働環境をよくしたい、安全衛生を保ちたい。そういう目的があるからですよね。

毎月末の給与明細で自分の評価をするだけではなく。
毎日、毎週末の業務ノート見直しで、今日はこれが早くできた、遅くてつまづいたなどの反省を繰り返し、すこしづつ、私は自分の業務のスピードアップができるようになりました。また、定時近くになったら翌日回しに仕事を切り上げることで、気分もリフレッシュできます。今日中にアレもやらなきゃ、コレもやらなきゃ、と思い詰めてしまうと、よけいに作業は進まなくなり、混乱してしまいます。

仕事が多くて大変!と悩む前に、どうすれば仕事を早くできるかと頭を切り替え、無駄な作業を失くし、事前準備をしたり、ミスを繰り返さないことで時短できることはあります。

あけすけにいえば、自分の報酬を自分で決めていいのならば。
自分が事業主になるしかありません。けれども、自分で経営の責任を負うということは、雇われの身よりも大変なことです。

ちなみに、労働生産性を高めたい、すなわち自分の時間当たりの作業量を増やしたいと思うならば。
いちばんいいのは、人当たりをよくして、周囲の協力を得、仕事をスムーズにしやすくすることです。なぜか、自分の仕事がしんどい、恵まれていない、とおっしゃる方程ほど、覇気がなくて提出物を遅らせて他に迷惑をかけたり、陰気な顔で仕事をいやいやしているので、空気が悪くなってしまうのです。環境への不満ばかりで、自分の気持ちをリセットできない幼稚なひとに思われてしまいます。本人は真面目に働いて努力しているつもりなのですが、空回り。誰もその人の仕事を楽にしてあげようとはしないでしょう。

実は私自身がこの手の一匹狼タイプだったのでよくわかるのです。
そのせいで、転職を繰り返してばかりいました。私が大企業にいたら、仕事ができて年収が高かったかといえば、そうではないでしょうね。

仕事の正当な報酬とは、なんでしょうか?
私からすれば、他者との調和がとれた組織内で、自分の役割を果たし、業務改善に取り組めることではないか、と思うのです。この会社で働けて良かったな、いい上司や同僚と一緒に働けて楽しいな、それが幸せだ、と思えるのならば、多少のお金の不安は薄らぐのではないでしょうか。

高年収の仕事=自分は価値がある人間だ、という呪縛から解放されることです。
所詮、仕事は誰かに与えられたものですから。それを失ってしまえば、自分のアイデンティティが壊れる、そんなふうに思いこむことで自分を不幸にしています。それはもったいない生き方ではないでしょうか。

(2023/03/04)




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