現在の勤め先に入社してすぐのこと。
ある書類のファイルがみつからない。仕事に慣れないうちは何でも質問して、と教わった私は。側にいる経営者に在処をうっかり尋ねてしまいました。すると、彼はいきなり外へ飛び出していってしまったのです。5分ほどして黙ったまま戻ってきたのですが…。書類はもちろん、あとで自分で探して発見できました。
そういえば、同じような場面に出くわしたことがありました。
東京の友人を訪れて、駅でお別れというときに、なぜか、彼女、さっさと改札を通っていってしまったのです。あの時の私は、なぜ、そんなシラケた対応をされたのか意味不明でした。
しかし、今となってはこの両名がどうして「その場を離れた」のかわかります。
失礼で、愚かなことを言った私を傷つけないために、自分の荒ぶった感情をぶつけないようにしてくれていたのです。これは社会人として、和を乱さない、とてもあたりまえの態度なのですが。いい大人になりましても情緒不安定な私は、その真意を理解できませんでした。
私は日ごろHSPなるものを自認し、それを他言してはいないけれど、他人の不機嫌さには敏感です。
過剰に怒鳴ったり、悪口を言いふらしている人がいると、自分のからだが汚染されたように感じます。かくいう私自体もかなりの不平不満屋で、自分が被害者ぶっていますが、他者からみればお前の方が加害者だと思われていないとも限りません。
それはともかく、組織内で他人と協調して働かねばならないのですから。
必要なのは、IQ(頭の良さ)だけではなくEQ(心の知能指数)。学歴でうぬぼれている人間は感情の抑制ができないことで、自分の評価を下げてしまいがちです。
数年前から、自分のビジネススキルが足りないのは、このマインドセットが不十分であることを自覚していました。マインドフルネスだとか、アンガーマネジメントだとか、メンタルへルスマネジメントに必要な技術をあちこちの本で調べ、なんとかいつも不動心な自分でありたいのだと願っていたものです。
私が意識して行っているのは、出勤前の仮眠と小休止。
入社すぐは業務ノートに予定をぎっしり書き込み、あれもこれもと、出社前から脳がお仕事モードで疲れ果てていました。これをリセットするために、独りきりになれる休憩用の別室に移動し、メモ帳をおいて考えたことを細々と残しています。なかには、ブログ記事の下書きや二次創作のネタもあったり。
怒りは碇のようなもので、足を揃えて船出したい前向きな気持ちを失わせます。
しつこくぶりかえす感情の荒波で、私はいつもいつも、どの仕事でも、出社前に不満をぶちまけていました。それがあまりに溢れだし、涙が止まらなくなり、当日欠勤になってしまって…ということもよくありました。業種だとか、業界だとか、社風だとか、働きにくい原因はいろいろあるが。けっきょく、それを自分がどうとらえるか、なのです。
怒りが生じたときに鎮める方法としてよくあるのが
・深呼吸してきれいな空気を吸う。吐くときに嫌な感情を押し出す。
・数を数えて、思考を切り替えてみる。顔をあげ、別のもの(自分がお気に入りの美しいもの)へ目を逸らす
・その場から思い切って離れてみる、他者の感情を被爆しないように逃げる
・ムッとしても、言い返して勝ってやろうとしてはならない。相手は正論が通じない。
・嘘でもいいので嫌な人間にも明るく振る舞う。上手に負ける者が幸せに生き延びられる。
・他人と自分(たとえ親子、夫婦、きょうだいであっても)とは別々の人格で、異なる人生を歩む存在だと割り切っておく
・施した恩は水に流して、戴いた恩は胸にしかと刻め、を心がける
怒りは何故生じるのか?
他人の言動が、自分の劣等感をいたく傷つけてしまうからです。他人から攻撃されたとき、実は無意識にそれをうけてしまう余地を相手に与えてしまっているのかもしれないのです。私は自分から学歴や、過去の職歴のことや、そのほか家庭のことを今の職場ではばらさないようにしています。近づきすぎると、やはりつけ入られてしまうからです。
怒りをあまりに押さえつけていると、我慢の連続で自分のココロがひしゃげてしまいます。
カラダが悲鳴をあげ、不眠や頭痛、胃の不快、神経過敏、嘔吐感などなど、様々な健康不安に陥ります。医者をはしごして回ってもメンタルからくる不調は薬では治りません。なので、自分が思考停止に陥って、なにもかも無気力になり、果ては希死念慮まで抱くまえに、日ごろから自分の心身のメンテナンスを心がけておきたいものです。
怒りの感情があることを認めてもいい。
けれど、それをオモテに出さなければいいだけの話。多くの人がネット上の日記で憂さ晴らしをしているのは、かろうじて心身のバランスを保とうとしているからではないでしょうか。
怒りをおさえるとともに、楽しいことや喜びごとで自分の人生を満たし、幸福感で身を固める。
他人が不幸だからといいまして、自分も自粛することなんてないのです。これみよがしに見せつけるのもよくないですが。
会社ライフがうまくいっても、家庭生活でギクシャクもあります。
私は気が乗らない時は、休日の家族サービスをやめ、独りで過ごすようにしています。取り返しのつかないハラスメント沙汰になるのは、たいがい、どちらかが折れない、譲り合わないときです。黙って逃げるのが、いちばん賢いのだと、この年になってやっと学んだのです。
ところで、こうした感情の抑制方法をすべての人が実践していけば。
昨今、話題のナントカ教会のような、霊感商法めいたふとどきな宗教がこの世にはびこるはずがないと思うのですが。
(2022/09/17)