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Channel: 陽出る処の書紀
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エイプリル・フールに観たい映画「フェイク」

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4月1日はエイプリル・フール。
コロナ禍前までは企業ホームページなどでおふざけ企画がありましたが…。最近はフェイクニュースの弊害もありまして、あまりお遊びもしづらくなりましたよね。
今回ご紹介する映画は、嘘からはじまった友情は、ほんとうにできるか否かの男たちを描いたクライムムービー。

人を殺めたり、麻薬や法外な金儲けで社会を乱したりするのが常套の稼業に、友情も愛もないもんだとは思うけれど、あまり血なまぐさい部分は描写を省いていたせいか、それとも主演ふたりの熱演が光ったせいか、こころに留めておきたい良作となったのが、1997年のアメリカ映画「フェイク」(原題 : Donnie Brasco)

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1978年、ブルックリン一帯をしきるギャングに属するレフティは、贋の宝石を掴まされそうになったところを救われた縁で、ドニー・フラスコという若者と親しくなった。虚勢を張ってこそいるが、レフティは組織の下っ端で、うだつのあがらない男。行動力もあり知恵の回るドニーを片腕と頼み、裏社会の流儀を親身になって教え込んでいく。だが、ドニーは実は、ジョー・ピストーネという本名の囮捜査官だった。

レフティに近づきマフィアの動きをFBIに密告するのが、ジョーのほんらいの務め。この極秘任務のために、ジョーは愛する妻や娘たちと会える時間もない。家庭よりも仕事を優先させる夫に不満をぶつける妻とは、距離ができてしまう。
いっぽう、いつかは足を洗って店を持ちたいと願うレフティにほだされ、行動を共にしているうちに、いつしか捜査官としての職務を忘れ、殺人などの裏稼業の深みに引きずられていってしまう。ギャングのドニーとしての偽もの人生の方が重くなり、組織でも頭角を現しはじめていった…。

ジョーを苦しめていたのは、自分とおなじように世帯持ちでありながら家族愛に恵まれないレフティの存在。ドラッグ漬けになって入院した我が息子に対するレフィティの愚痴を聞かされたジョーは、情にほだされてしまい、彼を裏切ることができないでいます。おそらくこのふたりの間にあるのは、父子の情に似た愛情だったのでしょう。
やがて、レフティの親玉が経営するバーがFBIに摘発された一件から、内部抗争が勃発。レフティは裏切り者がいるはずだと主張するも、ドニーのことを疑いはしません。ジョーのほうも、ミイラ取りがミイラになっている身の危険を感じつつも、レフティの側を離れられない。しかし、ふたりを分かつ決定的な事件が生じてしまう…。

実話をもとにしたとはにわかに信じがたいほど、鮮やかな展開の連続。一歩先になにが待っているのかがわからないまま、組織に身をおかざるを得ない主人公の不安な心理と、小心者だが憎めないギャングとのひそかな友情が、よく伝わってきます。
ラスト、レフティが妻にドニー宛の伝言を託して、死を覚悟で我が家を後にするすがたはなんとも哀愁がありますね。そして、勲章をもらってもわだかまりを抱えたままのジョー。結果として、親しい友人を死に追いやってしまった彼の苦悩が、無表情の下ににじみ出ています。


レフティを演じたのが、「ゴッドファーザー」で知られる名優アル・パチーノ。「リクルート」でも、若者を育てる役どころでしたが、そちらは裏切ってしまう方。
ジョーを演じたのは、出演作に応じてがらりと印象の変わるジョニー・デップ。

監督は「ハリーポッターと炎のゴブレット」「白馬の伝説」のマイク・ニューウェル。
原作は、元FBI潜入捜査官だったジョゼフ・ピストーネがリチャード・ウーリーと共同で執筆した回想録『フェイク/マフィアをはめた男』

(2010年1月22日視聴)

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