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Channel: 陽出る処の書紀
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映画「50回目のファースト・キス」

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きょうは即位の礼で、嬉しい一年かぎりの祝日です。
飛び石連休ですが、週明けの忙しさを抜けての休暇にほっとしています。以前はこんな日は映画を楽しんだのですが、現在は過去にしたためた在庫レヴューで紹介します。

先日テレビで邦画としてこのタイトルがあったので思い出した一作。
つい言われたこと忘れてしまって、あるいはわざと忘れたふりをする私からすれば、良作認定しておきたい作品を。

2004年のアメリカ映画「50回目のファースト・キス」(原題 : 50 First Dates)は、軟派な男が風変わりな女にはじめて純粋な恋をしてしまうというラブコメディ。笑いの要素が多いのですが、ふしぎとこころが温かくなれる作品です。


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ハワイ島ワイキキの水族館ではたらく獣医ヘンリー・ロスは、後腐れのない恋愛を好むタイプ。付き合った女性は数知れないが、いずれも本気になれない。

ある日、ヘンリーは喫茶店でルーシーという魅力的な女性と出会って、トントン拍子に話が弾む。
再会を約して別れたその翌日、ルーシーに声をかけるも、つれない態度をとられてしまう。腑に落ちないヘンリーは、喫茶店のオーナー夫婦から、ルーシーが事故の後遺症で記憶障害に陥り、一日経てば前日のできごとをきれいさっぱり忘れてしまうことを聞かされる。

主軸となるのは、もちろんルーシーとヘンリーの恋の行く末。
当初は浮気性で下世話な冗談が大好きなヘンリーは第一印象ではいけ好かない野郎なのですが、その彼がルーシーに振り向いてもらうために、あの手この手と画策。このあたりが涙ぐましい努力とは申せ、なかなか笑えてしまう。

さらに魅力的なのは、彼らをとりまく周囲の人びと。
ルーシーの境遇に同情して母親がわりとなっている喫茶店のマダムとその旦那。そして、ルーシーの父親と弟。かなりアクの強いメンツなのですが、彼女の気持ちを壊さないために、毎日おなじことを繰り返しては忘れていくルーシーに忍耐強く接していました。しかし、その衝撃的な事実に気がついてしまうルーシー。気がついても翌日には忘れてしまうルーシー。

ヘンリーは永遠に明るい未来へ前進できないルーシーを救うために、真剣にルーシーに想いの丈を告白し、一日経てば終わってしまう初恋を繰り返していくのです。しかし、そのために彼が研究者としての長年の夢を諦めたことを知ったルーシーは別れを切り出して…。

最後はハッピーエンドなのですが、いささかベタだなと思う展開を重ねながらも、ラストを迎えるまでの時間の置き方がいいですね。障害を扱っているのに、辛気くささをまとわせず、さらっと人びとの善意を描き、善意に頼らないで生きようとする障害者の意識も描き、気持ちのいい作品にしあがっています。ただ、ところどころの下ネタの羅列とナンセンスなギャグが許容できれば、の話ですが。

ただ、こういう差別や障害というコンプレックスをおちゃらけて表現することは、一歩間違うとかなり誤解を生みやすいかもしれませんね。本作はチャーミングな動物のかわいらしさと青いビーチが微妙な緩衝剤となって、救われているのかもしれません。

出演は「チャーリーズエンジェル フルスロットル」のドリュー・バリモアとアダム・サンドラー。
監督はピーター・シーガル。

にしても、一日経てば忘れてしまう性分って、嫌なことばかり根深く覚えていてしまったりする自分にとっては、失礼ながらちょっぴり羨ましいかも。世話をする方々の献身の苦労を思えば、うかつに羨ましがってはいけないのでしょうけど。

新しいことが頭に入らなくなって、いつも,単調なことの繰り返ししかできない、いわゆる認知症の状態に近いようなことは、いずれ自分にも起こりうること。本人の葛藤もあるが、支えてくれる人の大切さを実感させられますね。しかし、困ったひとに振り回されていくひとのケアも、この社会では大事なことではあるのです。世の中は優しさだけでは満ちておらず、建設的な支援の広がりが必要です。

(2010年11月13日)

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