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Channel: 陽出る処の書紀
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米国の新しい選択

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びっくりしましたね。
合衆国大統領選が現地時間8日に投票、その翌日にはなんとドナルド・トランプ氏が当選。メディアの事前予想では僅差でクリントン氏優位でした。かたや前国務長官で、もとファーストレディの政治経験豊富ながら、メール問題がFBIの捜査で再燃し窮地にたったり。もう一方は、人種差別や移民排斥、そして過去のセクハラ発言や脱税疑惑も取り沙汰された実業界の成功者。軍配は後者。米国民の、とくに製造業の衰退で雇用を奪われていった白人労働者層を中心にした不満を、一代で財を築きテレビ司会者でも顔なじみのトランプ氏がうまく吸収したかたち、となっています。

要するに、リベラル派への、民主党政権への反動なのですね。
リーマンショック後の景況感悪化から麻生内閣へのパッシングが生じて、劇的な政権交代劇が生じたのは2009年の日本。その背景には、2008年に誕生したオバマ大統領の「チェンジ!」という煽りがあったことは否めません。民主党政権の改革の失敗から自公民政権へと揺り戻し、いまや安倍内閣は総裁任期3期9年に延ばしてしまったくらい長期安定してしまっている始末。今回の大統領選は、トランプ氏を選んだと言いますより、共和党支持者もしくは多くの無党派層の保守への回帰という意向の現れとみてよいでしょう。

選挙戦中盤に数々のスキャンダルが噴出し、一時は共和党内部からも軋轢を招いたトランプ氏ですが、既存の政治家や既得権益層(エスタブリッシュメント)を毛嫌いする庶民にはこれが奏功したのではないか、という分析もあります。小泉純一郎元首相の「自民党をぶっつぶせ」を想起させますね、これは。

ヒラリー女史が当選すれば「女性初」の合衆国大統領誕生。女性の社会進出を阻む「ガラスの天井」を破りたいという想いがあったのでしょうが、韓国やタイに続き、台湾や英国でも国のトップに女性が就任しつつある流れではあるものの、長年ホワイトハウスに在職しながら米国の財政赤字や格差を止められなかった責任を問われたかたち。「女性にやさしい」とか「女性がトップに立てば」というのは、あまり前面に出しすぎると、男性陣のみならず同性からも反感があるやもしれませんね。ヒラリー女史は移民歓迎の立場でしたから、ドイツのメルケル首相のイスラム系移民の大量流入による混乱の二の舞になるという懸念もあったでしょうし。

米国第一主義を掲げ、TPP交渉や在日米軍の費用問題などで日本に注文をつけたがるトランプ氏を日本の主要メディアはあまり応援していない風で、安倍内閣もどちらかといえばクリントン氏に肩入れ。逆転勝利の報を受け、急きょ、次期大統領との会合をセッティングしたそうで、今後の日米関係を強固とすべき、外交手腕が期待されますね。過激発言で不安視されていましたが、為替相場も落ち着いてきたようですし。しかし、フィリンピンのドゥテルテ大統領といい、中国よりのやや厚顔なタイプのトップばかりが登場しつつあるのは、世界の情勢のややきなくさい感じを嗅ぎ取ってしまいますね。

政治家には国民の懐におもねる内向きの顔と、各国の首脳と渡り合うタフな外向きの顔があります。トランプ氏が公約に掲げたものの一部は実現可能性が疑問視されるものもありますが、日本にとって米国はたいせつなパートナーですから、安倍さんともどもうまく関係を築いてほしいものですね。TPP撤退になるほうが歓迎という方もいるでしょうし。




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