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Channel: 陽出る処の書紀
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映画「カッコーの巣の上で」

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1975年の米国映画「カッコーの巣の上で」は、精神病院に入れられた男たちを描いた問題作。
さいしょ、ひとりの新入りが陰鬱な雰囲気の漂う院内の空気を変えて更生していく感動作なのかと思っていたら、まったく違いました。さすが、あの「アマデウス」で天才音楽家モーツァルトを狂人めいた男にしあげたミロシュ・フォアマン監督だけあります(褒め言葉)

以下、ネタバレあり。

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1963年、オレゴン州立精神病院に新しい患者が入院。その男、マクマーフィは前科五犯の小悪党で今回は淫行罪で服役したが、じつは強制労働逃れのために精神異常を装っていた。
精神病院内の患者はみな大人しく、婦長のラチェッドに従っている。十八人のうち、ほとんどがみずから望んで入所し、出ていこうともしないことに驚くマクマーフィ。

マクマーフィはベースボールのワールドシーリズ見たさに投票を呼びかけたり、バスケのゲームで人心を得ながら、周囲の空気を明るくしていく。ある日、脱走に成功した彼は患者たちを連れて、クルーザーで出航。自由を謳歌した彼らの顔は生き生きしていた。
その罰で、電気ショックをかけられたマクマーフィだが、懲りずに悪だくみ。
なんと、院内に女友達を連れ込み乱痴気騒ぎを起こす…。

精神病院の管理体制に波紋をかけ、自由と尊厳を求めて戦うヒーローのように謳われていますが、マクマーフィはただ頭の切れる小ずるい男にしかみえません。厳格な婦長の言いつけに逆らってことごとく抵抗する姿なんて、大人げないとしか言いようがない。
自由がないといっても、強制労働させられているわけでも、院内でいじめがあるわけでもない。学校のような規律があって、カリキュラムどおりに一日を過ごさなきゃいけないだけ。そもそも刑務所での労働を嫌がって、気違いを装ってここに来たくせに、何の文句があるんでしょうか。このマクマーフィの行動がまったく理解できない。
「ショーシャンクの空に」や「グリーンマイル」で描かれている刑務所暮らしに比べたらよほど天国でしょうに。

乱痴気騒動でけしかけたビリーと女との一夜。それを婦長に責められて、ビリーは自殺してしまいます。
そして、そのことに逆上したマクマーフィが婦長を絞め殺そうとする。このあたりなんぞは、まったく同情できないですね。間接的にビリーを死に追いこんだのは自分なのに。想いだしたくもないですが、女子大生に酔った勢いで暴行をうながした某大学の事件を想起させます。

さて、このマクマーフィ。この事件がたたって、けっこう悲惨な最期を遂げてしまいます。
そして、窮屈な籠のなかから逃げ出したのは、マクマーフィから友情と自由の味を学んだ男チーフ。このラストはまだ救いがありますね。

自由というのはあくまで他者の権利を侵害しない範囲において、そしてそれなりの義務を果たしてから主張すべきだと思う私には、この主人公が自由を得るためにとった行動の数々にはあまり賛成できないです。バスを奪って海に出かけたあたりまでならわかるけど。


主演は実力派俳優のジャック・ニコルソン。共演はルイーズ・フレッチャー。
第48回アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞を受賞。アメリカン・ニューシネマの代表作として評価が高い。
原作は1962年の、ケン・キージーのベストセラー小説。

カッコーの巣というのは、精神病院の蔑称のようですね。

(〇九年八月三十一日)

カッコーの巣の上で(1975) - goo 映画

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