この記事は、漫画『進撃の巨人』が最終回を迎えたことに関する雑感を書いた日記です。最終話のレビューではありませんし、ネタバレはほとんどありません。
2021年4月9日をもって、とうとう11年7か月の連載を終了させたことが話題になった漫画『進撃の巨人』。昨年の『鬼滅の刃』もそうですが、人気漫画の動向はビジネス雑誌や新聞までが報じる世の中になりました。
全世界では1億部発行され、ネット上では海外勢のレヴュアーも多いとか。漫画家の諌山創先生の故郷には、人気キャラのリヴァイ兵長の銅像まで建てられており、特産品のデザインまで手掛けているとか。うちの地元県出身でも著名な漫画家さんもいらっしゃいますが、ここまで地域経済に貢献してくれそうなクリエイターさんがいるって羨ましいですね。
この『進撃の巨人』、コミックス第一巻が出た当時から、朝日新聞紙面の読書欄で推薦されるなど、かなりマスコミに推されていた覚えが。主題歌歌手グループも紅白出場したし、三浦春馬主演の実写映画もありましたし。私も身内がコミックスを持っていたので拾い読みしましたが、当初、巨人がグロテスクすぎるのと絵柄が好みではないので敬遠していました。一部の女子キャラ(クリスタとユミル)が百合っぽいみたいな意見も聞いたけれど、原作漫画でそんな雰囲気は微塵もないし。最初に読んだのは、エレンが手足をなくして、ある人物らに拉致されるあたり。
ところが…。
昨年末からNHK放映されたアニメ四期のTheFinal Seasonを何気なく観ていて、ハマってしまいました。
当初は、謎の生命体である巨人と戦う青年兵士たちのバトル少年漫画だと見くびっていたのに。じつは巨人の正体やその武力を利用する組織が明らかになり、さらには主人公をめぐる血の因縁や、国々の戦争、民族差別、政治問題などが絡み合う深いテーマを追及したお話になってくるんですね。巨人の倒し方をどうこうする強さが主軸ではなく、あくまで人間の泥くさいドラマ。
とくにファンの間で定評があるのが、連載開始から周到に巡らされていたという伏線回収の見事さ。自分のお気に入り作品もそうなのですが、最終回を経てから一話から読み直すと、別の印象をもってしまうマジックがあるという。
とくに今季放映されたマーレ編は、主人公とかつての戦友、そして巨人たちの立ち位置が入れ替わり、もはや正義も悪もなく、人類の存亡をかけた丁々発止の戦いの連続で、一話たりとも目が離せない展開。CMがないせいもあってか、毎回25分ぐらいのアニメなのにまったく退屈しない。しかも、昨今の萌えアニメみたいにカラフル過ぎない、落ち着いた配色なので、アニメだけども実写映画を観ているような手ごたえ。今季から制作会社が変わって原作の印象に近づけたらしいですが、私もこちらのほうが好みです。
原作漫画も139話をもってフィナーレとなったのですが、最終回一歩手前でかなりの衝撃的な展開があったらしく、ネット上で話題騒然となっていました。最終回の感想は人それぞれですが、当初予想されたものから社会的影響を考慮して、若干ショックを薄らげたものにしたのではないか、とも噂されています。
アニメで興味を持ったので、ネタバレ含めて情報を集めて、完結を機に単行本も読んでみたいと考えています。この作者さんのデビュー作も拝見しましたが、漫画の描線としては成立していない粗削りな作品をよくぞここまで育てたものだと感心します。作者さんが持ち込み投稿して少年ジャンプの編集部に断られた逸話は有名ですけど、週刊誌のように、毎週きわどいショッキングな展開を細切れに出さないといけない雑誌だったら、この漫画は別ものになっていたのかも。
しかし、全34巻て、けっこうなボリュームですよね。
途中、王政編あたりで話が複雑になって売れ行きに陰りがあったものの、熱心な読者の応援で今に続く人気を保てたというのも、なんとなく微笑ましいですね。最終話までを描くアニメの次シーズンは今冬テレビ放映予定とのことです。
私はあまりアニメグッズやらイベントやらにお金を落とすほどの優等生オタクではないのですが。ひさびさに考察記事とかレビューを読み込むのがおもしろい作品に出会えてとても満足でした。
この面白さは、文学的とでもいっていいものだと思います。
これまでの少年漫画にはなさそうな、独特な世界観も魅力ですね。特撮のウルトラマンとか巨大なロボットとかが戦うシーンにワクワクする人は絶対ハマりますね。人智を超えた巨大で不可解ものに人類が向かうというテーマは普遍性があります。私たちは常にままならない日常と、いつ訪れるかもしれない理不尽な死と破壊と隣り合わせに生きているのですから。